酸蝕症とは?歯が溶ける原因と炭酸・お酢・酸っぱい食べ物との付き合い方
2026/9/9

「むし歯はないのに、歯の表面がすり減っている」
このような状態の原因のひとつに、「酸蝕症(さんしょくしょう)」があります。
酸蝕症は、食べ物や飲み物などに含まれる酸によって、歯の表面が少しずつ溶けていく状態です。
特に注意したいのが、
- 炭酸飲料
- お酢・果実酢を使った飲み物
- 酸っぱいグミや飴
- 柑橘類や果汁飲料
- スポーツドリンク
- ワインなどのお酒
です。
ただし、これらを「食べてはいけない」「飲んではいけない」という話ではありません。
大切なのは、何を口にするかだけではなく「どのくらい頻繁に口にしているか」です。
酸蝕症はむし歯とは違います

酸蝕症とむし歯は、どちらも歯が溶けますが原因が違います。
むし歯は、歯垢の中にいる細菌が糖を利用して酸をつくり、その酸によって歯が溶けていきます。
一方、酸蝕症は食べ物や飲み物、胃酸などの酸が直接歯に触れることで起こります。
つまり、
むし歯
→ 細菌がつくる酸で歯が溶ける
酸蝕症
→ 飲食物などの酸で直接歯が溶ける
という違いがあります。
「毎日しっかり歯磨きをしているから大丈夫」とは限らないのが、酸蝕症の難しいところです。
歯が丸くなったり、平らになったりしていませんか?
酸蝕症が進むと、歯の表面が少しずつ変化していきます。
例えば、
- 歯の表面がツルツルしている
- 奥歯のかみ合わせ部分が平らになっている
- 歯の先端が薄くなっている
- 歯が以前より黄色く見える
- 冷たいものがしみる
- 歯が短くなったように見える
といった変化がみられることがあります。
初期には痛みがないことも多いため、自分では気づきにくいことがあります。
お酢や炭酸だけが悪いわけではありません

「炭酸は歯に悪い」「お酢は歯を溶かす」と聞いたことがある方もいると思います。
確かに、お酢や酸性の強い飲み物は注意が必要です。
しかし、「これが一番悪い」と単純に決められるものではありません。
歯への影響は、
- 飲食物の酸性度
- 口にする回数
- 口の中にとどまる時間
- 飲み方・食べ方
- 唾液の量
などによって変わります。
特に私たちが気をつけてほしいと思っているのが「回数」です。
酸蝕症では「頻繁に」が一番の問題です
同じ飲み物でも、食事のときに飲むのと、一日中少しずつ飲み続けるのでは歯への負担が変わります。
例えば、
朝にお酢のドリンク
↓
仕事中に炭酸飲料
↓
午後に酸っぱいグミ
↓
夜にワイン
という生活が毎日のように続けば、歯が酸にさらされる回数も増えていきます。
さらに、500mlの飲み物を短時間で飲む場合より、数時間かけて少しずつ飲み続けるほうが、歯が酸に触れる時間は長くなります。
「量をたくさん摂っていないから大丈夫」ではなく、何回口の中を酸性にしているかを考えてみてください。
健康のために飲んでいるものも、一度確認してみましょう

最近は、果実酢や飲むお酢などを健康や美容のために習慣にしている方もいらっしゃいます。
韓国発の飲むお酢なども身近になり、毎日の習慣として取り入れている方もいると思います。
身体のために飲んでいるものでも、歯から見ると「酸性の飲み物」であることには変わりありません。
飲むこと自体を否定する必要はありません。
ただ、
- 一日中少しずつ飲まない
- 口の中にためない
- 飲んだあとに水を飲む
- 食事と一緒に飲む
など、歯への接触回数を減らす工夫はしておきたいところです。
酸っぱいグミや飴にも注意が必要です
飲み物だけでなく、最近増えている酸味の強いグミや飴なども注意が必要です。
特にグミや飴は、一度に食べ終わらず、
「仕事をしながら少しずつ」
「車の運転中に何度も」
という食べ方になりやすい食品です。
酸っぱいものが好きな方ほど、「何を食べているか」だけでなく「何回食べているか」も振り返ってみてください。
ワインを頻繁に口にする仕事の方も注意が必要です
ワインも酸性の飲み物です。
一般的に食事の際に楽しむ程度であれば、必要以上に怖がる必要はありません。
一方、ソムリエやワイン関係のお仕事などで、仕事中に何度もテイスティングする方は話が変わります。
日本のワイン製造従事者を対象とした研究でも、仕事中に酸性の飲食物を頻繁に口にすることと酸蝕症との関連が報告されています。
仕事上避けられない場合は、飲まないようにするのではなく、定期的に歯の状態を確認しながら守っていくことが大切です。
歯ぎしりがある方は「酸+力」に注意

歯の表面がすり減っていると、
「歯ぎしりが強いからでしょうか?」
と聞かれることがあります。
歯ぎしりによる歯と歯の接触でも、歯はすり減ります。
ただし、歯ぎしりだけが原因とは限りません。
酸によって歯の表面がやわらかくなったところに、歯ぎしりや強いかみ合わせなどの力が加わると、歯の摩耗が進みやすくなることがあります。
そのため、
「歯ぎしりだから」
「酸蝕症だから」
と一つの原因だけで考えず、食生活やかみ合わせも含めて確認することが大切です。
一度失った歯は元通りにはなりません
ここは、とても大切なところです。
歯の表面のエナメル質は、一度大きく失われてしまうと、皮膚のように新しく生えて元通りになることはありません。
軽い段階であれば、唾液やフッ化物などによって歯の表面を守ることはできます。
しかし、すでに削れてなくなった部分そのものが再生するわけではありません。
歯は毎日、一生使っていくものです。
だからこそ、悪くなってから治すだけではなく、「できるだけ減らさない」という考え方が大切です。
酸蝕症を防ぐために今日からできること

すべての酸っぱいものをやめる必要はありません。
まずは、摂り方を変えてみてください。
- 酸性の飲み物を一日中少しずつ飲まない
- 酸っぱいグミや飴をだらだら食べない
- 酸性飲料を口の中にためない
- 飲んだあとは水を飲む、または口をゆすぐ
- 酸性のものを口にした直後の強い歯磨きは避ける
- フッ化物配合歯磨き剤を使用する
- 定期検診で歯のすり減りを確認する
特に重要なのは「回数を減らすこと」です。
好きなものをすべて我慢するより、食べ方・飲み方を変えるほうが続けやすいと思います。
すでにしみる場合は、早めに確認しましょう

酸蝕症が進行して象牙質まで露出すると、冷たいものなどがしみやすくなります。
しみる状態に慣れて、そのまま過ごしてしまう方もいますが、歯が削れている原因を確認することが大切です。
進行度によっては、
- 食生活の見直し
- 知覚過敏への処置
- フッ化物などを使った予防
- レジンなどによる修復
- かみ合わせや歯ぎしりへの対応
などを検討します。
歯全体の摩耗が大きく進んでいる場合には、部分的な治療だけではなく、かみ合わせを含めてお口全体を考えた治療が必要になることもあります。
「何を食べるか」だけでなく「どう食べるか」

酸蝕症の予防では、
「炭酸を飲んではいけない」
「お酢をやめなければいけない」
という極端な考え方は必要ありません。
むしろ知っていただきたいのは、
「酸っぱいものを頻繁に口にする習慣が、少しずつ歯を消耗させることがある」
ということです。
歯は失ってから元に戻すことが難しい組織です。
だからこそ、むし歯や歯周病だけでなく、「歯をすり減らさずに長く使う」ということも予防歯科の大切な役割だと、おおしか歯科医院では考えています。
飯田市で「最近歯がしみる」「歯の形が変わってきた気がする」「歯ぎしりだと思っていたけれど心配」という方は、定期検診の際にもお気軽にご相談ください。
監修者情報
大鹿明完
H17年3月 長野県飯田高等学校理数科卒業
H23年3月 日本大学松戸歯学部卒業
H23年3月 日本大学松戸歯学部付属病院臨床研修医課程修了
H24年4月 日本大学松戸歯学部付属病院 総合歯科勤務
R2年4月 おおしか歯科医院 院長
資格・所属
おおしか歯科医院 は、先代院長が飯田の地に開業して以来、地域に根差した歯科医療を提供してまいりました。
地域の皆さまからいただいてきた安心と信頼により一層応えられるよう、医院をリニューアルし、新たな体制で診療を行っています。
常に患者様目線に立ち、スタッフとともにお口の健康増進をサポートできるよう努めています。